旅の話

大人女子(50's)の旅支度。旅の他、映画・海外ドラマの忘備録。

『サバービコン 仮面を被った街』(ネタバレ)クルーニーくん もう少しがんばりましょう

私が大好きなコーエン兄弟脚本の『サバービコン 仮面を被った街(原題:Suburbicon)』を鑑賞。 先に公開されたアメリカでも、評価はイマイチのようですが、コーエン兄弟ときけばファンとして無視はできない。 正確には、お蔵入りになっていたコーエン兄弟の脚本にジョージ・クルーニーと彼のビジネスパートナーでもあるグラント・ヘスロヴが手を加え、クルーニーが監督となって制作した映画。

あらすじ

1959年代アメリカ。白人だけが住む分譲住宅地サバービコンは明るく平和な町。 しかし、この町の住人ロッジ家の生活は、ある日強盗が侵入したことにより一転する。 車いす生活だった妻ローズ(ジュリアン・ムーア)は殺害され、一家の主ガードナー(マット・デイモン)は、幼い息子ニッキーの世話を妻の姉マーガレット(ジュリアン・ムーア 二役)に頼む。 やがて、父親の態度や行動に疑問を持ち始めるニッキー。

一方、ロッジ家の隣に、アフリカ系アメリカ人のマイヤーズ家が引っ越してきたことから、完璧に見えたニュータウンに不穏な空気が流れ始める。 サバービコン、そしてロッジ家に再び平和は戻ってくるのか…。

マイヤーズ一家は何のために?

結論からいうと、ジョージ・クルーニーが脚本に余計な手を加えた気がしてなりません。 元々お蔵入りしていた脚本なだけに、コーエン兄弟としても納得していない部分があったのかもしれませんが(それとも別の大人の事情でお蔵入りしていたのか?)、どうにもこうにも中途半端。 コーエン兄弟愛が勝って、私はそれなりには楽しめたものの、そうじゃない人が見たらどうかな…。

ちょっとしたボタンの掛け違いから、怒涛の不条理ジェットコースターな展開になるという点においては、まぎれもなくコーエン兄弟節。 しかし、ジョージ・クルーニーくんが、余計な手を加えてしまったようです。

ルーニーくんが追加した白人住宅街に越してきたアフリカ系アメリカ人に降りかかる災難の部分は、ペンシルベニア州レヴィットタウンで起きた事件をベースにしたそう。登場人物の名前も実話と同じマイヤーズ家。

政治活動にも熱心なクルーニーくんとしては、「そこが変だよ、アメリカ人」って感じで世間に警鐘を鳴らしたかったのかもしれません。 そのわりに、作品の中のマイヤーズ家は、お父さんもお母さんもファーストネームも分からないし、お父さんはセリフすらありませんが…。

こんなことなら、コーエン兄弟の脚本に頼らず、グラント・ヘスロヴと2人で、一からマイヤーズ一家に焦点をあてたシリアスな脚本を書いた方がなんぼかよかったと思う。 クルーニーくんには猛省を願います。

求むユーモア

人種差別という題材を盛り込んでしまったせいか、はたまた真面目すぎるクルーニーくんの性格のせいか、(ブラック)ユーモア不足です。

個人的には、これが最大の不満点。 ここぞという突っ込みどころのシーンにおいて、ほとんどすべてジョークネタが仕込まれてない。

予告編からは想像もつかないくらい真面目な展開に、ある意味度肝を抜かれます。

がんばったでしょう

コーエン兄弟のファンなので、厳しめの意見になってしまいましたが、よい点もあります。

まず、マイヤーズ一家。 ポジティブな見方をすると、隣の家が大変な騒ぎになっているのに、まったく無関心、というかそれどころじゃない騒ぎに巻き込まれているロッジ家、という対象が面白い(それを狙ったのかな)。 対象といえば、デブデブ体形の白人たちとシャープな体形の黒人というのも面白かったですね。

ルーニーくんだけの力じゃないけど、俳優陣の演技は、子役も含めてみんなよかったです。 ジュリアン・ムーアが断トツの演技力でしたが、体重増で臨んだマット・デイモンも悪くなかったと思います。

保険調査員を演じたオスカー・アイザックは、ジョージ・クルーニーにしか見えなかったけど、実際、コーエン兄弟の脚本段階では、クルーニーくんが演じる予定だったそうです。

さらにクルーニーくんとは関係ないけど、予告編が面白いですね。

この予告編とコーエン兄弟の名前につられて映画館に足を運んだ人も多いでしょう(私もだ!)。

というわけで(?)、クルーニーくんには、今回の件をしっかり反省して、次回につなげてほしと思います。